物事の価値観や善悪というものは、立場や見方でいくらでも変わる物です。
ある人にとっての正義が別の人にとっての悪になる、というのはこの世界のどこにでも転がっている話でしょう。
だからこそ争いが尽きることなく繰りかえされてしまう、本当にどうしようもない話です。
さて、かなり重々しい出だしになりましたが、今回紹介する作者・根崎タケル『暗黒騎士 勇者を倒すために魔王に召喚されました』(宝島社)はまさにそう考えさせられる内容です。
といってもそこまでシリアスな内容ではありません。
どちらかといえば『暗黒騎士物語 勇者を倒すために魔王に召喚されました』はコメディ部分が多いストーリーです。
それではこの記事では、『暗黒騎士物語 勇者を倒すために魔王に召喚されました』のあらすじや、感想を書いていきます。
ネタバレがありますので、『暗黒騎士物語 勇者を倒すために魔王に召喚されました』を前知識なしで挑みたい人は覚悟して読んでくださいね。
『暗黒騎士物語 勇者を倒すために魔王に召喚されました』に興味ある方も、そうでない方も
最後までお読みいただくと嬉しいです。
目次
『暗黒騎士物語 勇者を倒すために魔王に召喚されました』~あらすじ~
主人公行崎黒樹(以下クロキ)は突然異世界に召喚される。
「よくぞ来られた!我が救世主よ!」
召喚した魔王モデスは天界の女神アルレーナ(以下レーナ)が召喚した光の勇者とその仲間達を倒して、自分達魔族を救ってほしいと頼んできた。
しかし、その勇者と仲間達といのが元の世界で因縁のあった美堂怜侍(以下レイジ)と、幼馴染の赤峰白音(シロネ)達だった。
さらに詳しく話を聞くと魔王と女神が争う理由はとてもしょうもないことだった。
それでもモデスに近親感を感じたクロキは、悩みながらも剣をとり魔王を守る暗黒騎士となることにした。
この小説の主人公のクロキはとにかく自分に自信が持てない少年です。
それは生まれつきの性格もありますが、過去の出来事がきっかけとなっています。
暗黒騎士として戦えるだけの力はあるし、それは長年の修練で手に入れたものなのだからもっと誇っていいと思うのですが。
『暗黒騎士物語』は書籍だけでなく、元々web上で掲載されていたものです。
そちらは書籍とは違った点もありますが、こちらでも暗黒騎士クロキの活躍は読むことができます。
私は長いことこの作品が好きで、ずっと読んでいました。
今回書籍化したことをとても喜びました。
もしこの本に少しでも興味を持ってもらえなら、書籍やweb小説の方を読んでみてください。
ファンの方が1人でも増えてくれれば、私も嬉しいです。
『暗黒騎士物語 勇者を倒すために魔王に召喚されました』~ネタバレありの感想~
※ここからは『暗黒騎士物語 勇者を倒すために魔王に召喚されました』の内容のネタバレを含んだ感想コーナーです。
まだ読んでない人やネタバレは嫌だという人はここで止まってください。
『暗黒騎士物語 勇者を倒すために魔王に召喚されました』の大まかな流れを書き出していきます。(ネタバレあり)
①行崎黒樹(以下クロキ)は異世界の魔王モデス(猪の化物のような見た目)に召喚される。
↓
②モデスが支配する地ナルゴルは、現在天界エリオスの女神アルレーナ(以下レーナ)が召喚した光の勇者とその一行によって進攻されていて、このままだと滅ぼされる。
クロキは勇者を倒すために呼ばれた。
しかし、その勇者は元の世界で因縁がある美堂怜侍(以下レイジ)と幼馴染の赤峰白音(シロネ)と、他にも同じ学校の生徒だった女の子達だった。
レイジは元の世界で可愛い女の子の取り巻きを侍らせており(同性には態度がキツイ)、シロネも最近その1人になっていた。
それがきっかけでクロキとも疎遠に。
↓
③クロキは過去に通っている剣の道場で見学に来たレイジに負けたことがあり、敵う訳がないとおじけづくクロキ。
(なんであんな奴がいるのだろう?同じ歳なのにすごい違いだ(´;ω;`))
そこに魔王の側近であるランフェルド卿が乱入。実力を見せろと切りかかってるがクロキに投げ飛ばされる。
ランフェルドが限られた者しか使えない黒炎の魔法を使うも効かず、逆に黒炎を吸収する。
モデスによれば元の世界への帰還術はないとのこと。
↓
④モデスの妻モーナに詳しい説明を聞く。
もともとモデスは天界エリオスで暮らしていた闇の神の一柱。
光の神の女神に求婚したが全滅する(普通にアプローチしただけ、無理強いではない)。
それがきっかけで光の神々が共謀し、モデスに冤罪を着せ、エリオスから追放しようとする。
最終的にモデスはレーナの髪を一房と引き換えに受け入れ、配下とともにナルゴルに引きこもることに。
そこでモデスは妻になってもらえないなら造るまでと、レーナの髪を元にモーナを生み出す。
モデスとモーナは幸せに暮らしていた。
モーナに気付いたレーナは、モーナを引き渡せと要求。
モデスはこれを拒否、レーナの仕向けた男神達を返り討ちにする(モデスは闇の神でも最強クラス)。
そこでレーナは『異世界から来た勇者なら魔王を倒せる』という予言からレイジ達を召喚する。
勇者達により魔王軍はほぼ壊滅状態、慌てたモデスは勇者について調べる。
そして、『勇者を止めることができるのも異世界から来た者』という予言を知り、光の神の友から召喚術を教えてもらい、クロキを召喚した。
事情を聞いたクロキ(なんだかしょうもない事で呼ばれた気がする(-。-;))。
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⑤助けてもらえれば、モーナと同じように美しい女神を造ると言われる。悩みに悩んだがモデスへの近親感とくすぶる思いから剣をとることに。
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⑥魔王城の眼前に迫る勇者一行、そこに暗黒騎士として立ちはだかるクロキ(全身鎧で正体はばれてない、声も兜の効果で変わっている)。
「勇者レイジよ!一騎打ちを所望する!(*゚ロ゚)ォォォオオ」
内心はガクブル状態。アワ((゚゚дд゚゚ ))ワヮ。
モデスから貰った黒血の魔剣を構える。
↓
⑦負ける訳がないと一騎打ちを受けるレイジ
。何度か打ち合い一瞬の隙を狙い、レイジに致命傷を与える。
慌ててレイジと共に撤退するシロネ達。
戦いが終わり安堵するクロキ( ゚ ρ ゚ )ボーーーー。
↓
⑧天界エリオスでレーナは鍛冶の神ヘイボスに、モデスに勇者と召喚術をおしえたのかと詰め寄る。あっさり認めるヘイボス。
闇の神は光の神に従うべき、そうでないなら敵と言うレーナにヘイボスは寂しく思う。
モデスの一件以来、闇の神のほとんどがエリオスを追い出されていた(元々仲は悪かった)。
↓
⑨レーナはモデスを倒せば、勇者たちは元の世界に帰すという。
しかし、帰還術は不完全で元の世界に帰すどころかデタラメな場所に放り出すだけ。
勇者にはそのことを言わず、この世界から出ていかせるだけで良いというレーナ。
そんなレーナを嫌悪するヘイボス。
エリオスではレイジやクロキの力を危険視し、召喚術の禁止が決定した。
↓
⑩魔王宮で密談するモーナとナルゴルの宰相ルーガス。
モーナは異世界の者は利用するだけでいいと、ルーガスに内密にクロキを監視、及び弱点などを調べせることに。
↓
⑪ルーガスから魔法を習うクロキ。
レイジが生きてはいるが危険な状態と聞き、様子を見に行くことに。
案内役に闇妖精のティベルを同行させるモデス。
道中天使族に襲われるも余裕で追い払う(–)ノ” シッシッ。
↓
⑫人間の国、聖レナリア国の神殿で目を覚ましたレイジ。
仲間の水王子千雪(以下チユキ)は魔王討伐を止めようと言うがレイジ達は反対する。
レイジ達は魔物を世界中に放ち人々を苦しめる魔王を倒すために戦っている(モデスにそんな気はない)。
話し合いで帰還についてレーナに聞いてみることに。
↓
⑬レナリアに向かうクロキとティベル、途中で人間のドズミを助け、レナリアまで道案内をさせる。
レナリア到着後、ドズミの所属する戦士団(傭兵団のようなもの)に絡まれる。
その晩に泊まった宿を襲撃されるが返り討ちに┐(´-`)┌
戦士団のアジトに突入するクロキ、見せしめで殺されそうになっていたドズミを助け、暗黒騎士だと知られる。
「あの、逃げないでもらえますか?( ・`ー・´) + キリッ」なぜかそのまま「偉大なる御方!」
とその場の全員から崇拝されることに…(゚□゚)
↓
⑭どうやってレイジ達のいる神殿に侵入するか検討中のクロキ。
その頃チユキと美堂京華(以下キョウカ、レイジの妹)、その従者高山加弥(以下カヤ)と共に騎士の元に、国内に魔獣マンティコアが潜んでいる可能性があると説明
(クロキを襲った戦士団に飼われていた、既にクロキが討伐済み)。
騎士団で討伐すると決定、そこにキョウカとカヤも同行することに。
↓
⑮騎士団が来ることを知り、ドズミ達を前もって逃がすクロキ。
前科者の団長だけを残して様子見をする。そ
こでレイジの妹であるキョウカを観察しているとカヤに気付かれ、襲われる。
なんとか捌くとキョウカに爆裂魔法を撃たれ、咄嗟に人のいない方に逸らす。
↓
⑯神殿で剣の訓練をするレイジと見守るチユキ達。
そこにキョウカとカヤがマンティコア討伐の顛末を報告する。
話し合いの結果、その人物は召喚された日本人ではないかという結論に、それも含めてレーナに尋ねることに。
↓
⑰神殿に降臨したレーナに他の者が新たに召喚を行ったことを確認し、チユキとシロネを地球に帰すように要求。
聞いてもらえないなら他の召喚術を使える者(モデス)のところに行くと言い、レーナは2人を帰す(異界に放り出す)と決定する。
↓
⑱シロネ・チユキ帰還の情報を聞き、その夜神殿に侵入することに。
ティベルを先にナルゴルに帰し、魔法の力で神殿内を混乱させその隙にレーナの元に辿り着く。侵入者に気付いたレイジはレーナの元に行こうとするも、女の子達に止められる。
シロネが代わりにレーナを守りに行く(向かう途中でシロネの独白が入る)。
↓
⑲レーナと対峙するクロキ「はじめまして、女神レーナ」
。兜を脱ぎ、お辞儀をする(o*。_。)o。レーナと直接話さなければレーナが悪いと断言できないと考え、対話をすることに。
「また、自分と同じ異界の者を召喚するつもりなのかと・・・(`・ω・´)キリッ」
カマをかけるクロキ。
レーナは油断して帰還させる術だと答え、帰還術が完全でないことも承知だとも知る。
モデスの命を狙うのも、自分の複製を妻にしたのが気持ち悪いから。
兜を直し、召喚用の道具を全て破壊し勇者たちに真実を話せと剣を突き付けるクロキ(#^ω^)ビキビキ。しかしレーナにモデスでなく自分の騎士になれと言われ(利用する気満々)、呆気にとられる。
↓
⑳そこにシロネが飛び込んでくる。
無抵抗なレーナ(性悪女神)に剣を向ける暗黒騎士(クロキ)に憤り斬りかかるシロネ、その隙に逃げるレーナ。
なんとか話を聞いてもらおうとシロネの剣を弾き、無力化する。
戦意喪失し、いずれレイジがあなたを倒す、レイジの方が強いと言って泣き崩れるシロネ。
そこに現れシロネを庇うように立つレイジの姿に過去のことを思い出すクロキ。
(悪役である自分は消えるしかないではないか(´・д・`))。
その場から去り、飛行の魔法でナルゴルに帰還する。
↓
㉑エリオスのレーナは兄であるアルフォスからその後の顛末を聞かされる。
クロキは帰還中に空を警備していたエリオスの精鋭の聖騎士団を壊滅させた。
それが元で光の神のリーダー、神王オーディスはモデスと互いに異界人を召喚しないと協定を結ぶ。
今後暗黒騎士(クロキ)の行動は勇者達次第であり、そのため異界人をレーナがなんとかするようにと通達される。
なぜかクロキのことが気になるレーナ。
新たな召喚を阻止するために召喚用の道具を壊され帰れなくなった(勇者たちはそう認識している)ので頭を抱えるレイジとチユキ達。
自分たち以外にも召喚された者(クロキ)がいるはずなので、それを調べようと決める。
↓
㉒ナルゴルに帰ると新たな召喚を阻止するためにレーナを襲撃したということになっており、英雄の凱旋扱いされるクロキ( ̄▽ ̄;)。
モデスが報酬の女神の件を既に創り始めており、後は材料が揃えば完成すると言われる。
戸惑うも、可愛い彼女が欲しいという願望から喜ぶ(●´ω`●)。
完
以上が大まかな流れです。
すいません、全然大まかじゃありませんね(汗)。
書いてるうちにどんどん文章が増えていってしまいました。
これでもところどころ削ったんです。
普通異世界召喚物といえば勇者として呼ばれ世界を救うというのが定番です。
実際、レイジやシロネ達がこの作品でのその立ち位置にいます。
しかし主人公のクロキは魔王に召喚され、勇者や人類の敵として動いています。
個人的にこの作品のポイントはどちらも善ではない、というところだと思っています。
レーナを始めとした光の神は、モデスへの嫌悪感やその力を危険視してナルゴルに追放し、モーナという自分の複製を創ったのが気に入らないという理由で容赦なく襲い掛かろうとしています。
確かに、そんなことをされれば嫌がられるのは当たり前です。
ですが、そのために異世界の人間を召喚という名の誘拐をし、都合のいいことを吹き込み用が済んだら処分する、まさに外道の所業でしょう。
なにより彼らは自分達こそが正義だと思っています。
一方でモデスも自分の都合に他人を誘拐し巻き込んだ、という点では同じです。
また、弱気で優柔不断な面で光の神達に舐められ、争いを悪化させたという部分もあります。
これはクロキやレイジ達にも当てはまります。
結局どっちもどっちなのです。
これは現実においてもよくあることでしょう。
視点を変えればどちらも正しく、どちらも非がある。
だからお互いに譲らず争う。
読者として第3者視点で見ていれば本当に馬鹿らしい争いです。
この『暗黒騎士物語 勇者を倒すために魔王に召喚されました』はweb上で掲載されているのを読んで
「何度もどうしてここまで問題がこじれるんだ?」
と考えさせられました。
本の後書きでも書かれていますが、この物語の続きが気になる方は是非webの方を読んでください。
もしかしたら2巻目も出るかもしれません。
長くなりましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。
宝島社公式サイト『暗黒騎士物語 勇者を倒すために魔王に召喚されました』
http://www.cg-con.com/novel/publication/06_treasure/01_darkknight/index.html